本日はアメリカEVスタートアップ第三弾、ルシッドを紹介したいと思います。高級セダンモデルを発表し,一回の充電での走行距離は最大で516マイル(約830km)と恐ろしい走行力をもって差別化をおこなおうとしている会社です。シリコンバレーでもたまーーーーに見ますが、外見はかっこいい。特にフロントライトの一色線は芸術的です。
1.ルシッド(Lucid)とは?
ルシッド・モーターズ(Lucid Motors)は、アメリカの電動車メーカーであり、電動車両の開発と製造を行っています。主に高級電動車市場をターゲットにしており、テスラなどの競合他社と競争しています。以下に、ルシッド・モーターズに関するいくつかの重要な情報を提供します:
設立と本社:ルシッド・モーターズは2007年に設立され、カリフォルニア州メニローパークに本社を置いています。創業者の一人であるピーター・ローレンス(Peter Rawlinson)は、以前にテスラのモデルSの開発に携わった経験を持っており、ルシッドのCEOとして活動しています。
製品ラインナップ:ルシッド・モーターズは高級電動車を製造しており、その最初のモデルは「ルシッド・エア」(Lucid Air)です。ルシッド・エアは、高度なテクノロジーとパフォーマンスを備えたセダンで、異なるバリアントが提供されています。また、ルシッドは将来的にSUVの開発も計画していると言われています。
パフォーマンスと範囲:ルシッド・エアは高性能で、一部モデルでは0から60マイル(約96キロメートル)までの加速が非常に速く、長い航続距離も特徴です。ルシッドは、電動車技術の進化により、高い性能と長い範囲を両立させています。
テクノロジーと充電:ルシッド・エアは、高度な自動運転機能や先進的なコネクティビティオプションを備えています。また、急速充電技術を活用して、比較的短時間でバッテリーを充電できるよう設計されています。
競争と市場展望:ルシッド・モーターズは、特に高級電動車市場で競合他社と競争しており、テスラやリビアン(Rivian)などと競り合っています。電動車市場は成長しており、ルシッドはこの市場で一翼を担おうとしています。
2.ルシッドの強み
ルシッド・モーターズ(Lucid Motors)の強みは、以下のような要素に基づいています:
技術革新と高性能: ルシッド・モーターズは、最新の電動車技術と高性能コンポーネントを駆使して、競合他社に対抗できる高級電動車を提供しています。例えば、ルシッド・エアは非常に迅速な加速性能を持ち、高い航続距離を実現しています。
バッテリーテクノロジー: ルシッドは、自社開発の高容量バッテリーパックを搭載しており、電動車の航続距離や充電速度を向上させています。そのバッテリーテクノロジーは、他の電動車メーカーにも供給されるほど高い評価を受けています。
デザインと内装: ルシッド・エアは、洗練されたデザインと高品質な内装で知られており、高級車市場において競争力を持っています。そのデザインは、一瞥しただけで他社の電動車と区別される特徴を持っています。
自動運転技術: ルシッドは、自動運転技術の開発にも力を入れており、高度な運転支援システムを提供しています。この分野における取り組みは、将来の自動運転車両の展望において彼らの競争力を高めています。
持続可能性へのコミットメント: ルシッドは環境に対するコミットメントを強調し、ゼロエミッションの電動車を開発・提供することで、持続可能なモビリティに貢献しています。このコミットメントは、環境意識の高まりとともに、彼らのブランド価値を高めています。
資金力: ルシッドは、多くの投資家から資金調達を行い、製品開発と製造施設の拡張に資金を充てています。これにより、将来の成長と競争力強化に向けた資源を確保できています。
ルシッド・モーターズは、高級電動車市場で競争力を維持し、持続可能な電動車の開発と普及に貢献するために、技術、デザイン、環境へのコミットメントなどの多くの強みを活かしています。その将来の成功に注目が寄せられています。
ルシッド・モーターズ(Lucid Motors)は、特殊買収会社(Special Purpose Acquisition Company、SPAC)を通じて、株式市場での公開を実現しました。SPACは、既存の上場企業ではなく、新興企業が市場に出るための一つの方法です。具体的には、SPACが既存の上場企業として市場に上場し、その後、新興企業との合併を行うことによって、新興企業が公開企業となります。このプロセスは一般的に「逆取引」または「逆合併」と呼ばれます。
ルシッド・モーターズは、CCIV(Churchill Capital Corp IV)というSPACとの合併を通じて、2021年7月に株式市場に上場しました。CCIVはルシッド・モーターズの公開を支援し、新興電動車メーカーであるルシッド・モーターズの資金調達と市場参入を可能にしました。
この合併を通じて、ルシッド・モーターズは株式市場での資金調達を実現し、自社の電動車プロジェクトを推進するための資本を獲得しました。この公開を通じて、ルシッド・モーターズは高級電動車市場での競争力を高め、電動車技術の開発と製造を拡大するための資源を手に入れました。
SPACを活用することは、新興企業にとって資金調達と市場進出の手段として利用されており、特にテクノロジー分野や電動車産業などの成長産業で見られることが多いです。しかし、SPACの利用にはリスクも伴うため、慎重に計画と実行を行う必要があります。
4. ルシッドの車種
ルシッド・モーターズ(Lucid Motors)は、高級電動車の製造に取り組んでおり、その車種ラインナップは主に電動セダンに焦点を当てています。以下は、ルシッド・モーターズの主要な車種とその特徴です:
- ルシッド・エアは、ルシッド・モーターズの最初の製品で、高級セダンとして知られています。異なるトリムレベルが提供され、性能と航続距離の違いがあります。
- トリムレベルによる最大航続距離は、約500マイル(約805キロメートル)に達します。
- 高度なテクノロジー、快適な内装、豪華な仕上げ、自動運転機能などが特徴です。
ルシッド・エア・グランド・ツーリング (Lucid Air Grand Touring):
- ルシッド・エア・グランド・ツーリングは、ルシッド・エアの高性能バージョンで、より迅速な加速性能とスポーティな特性を提供します。
- 最大出力が強化され、0から60マイル(約96キロメートル)までの加速が非常に速く、さらにスポーツチューンされたサスペンションが備わっています。
ルシッド・エア・ドリームエディション (Lucid Air Dream Edition):
- ルシッド・エア・ドリームエディションは、ルシッド・エアの最上位モデルで、最高の性能と豪華さを提供します。
- 高出力モーターと高性能バッテリーにより、迅速な加速と優れた航続距離を実現しています。
- 豪華な内装仕上げと高度なテクノロジーが装備されています。
ルシッドは高級車路線であり、価格は$80,000~となっております。ルシッド・モーターズの車種は、高級車市場での高性能とテクノロジーを提供するための重要な役割を果たしています。
5.競合分析
ルシッド・モーターズ(Lucid Motors)は、高級電動車市場で競争しており、いくつかの競合他社と競り合っています。以下は、ルシッド・モーターズの主要な競合相手です:
テスラ(Tesla, Inc.): ルシッド・モーターズの最大の競合相手は、テスラです。テスラは電動車市場のリーダーであり、幅広いモデルを提供しています。テスラの車両は高性能で、長い航続距離を持つことで知られており、電動車市場での圧倒的なシェアを持っています。
ポルシェ(Porsche): ルシッド・モーターズは、高級電動車市場でポルシェとも競合しています。ポルシェは電動スポーツカー「Taycan」を提供しており、高性能な電動車で高級車市場をターゲットにしています。
メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz): メルセデス・ベンツは、高級車市場で「EQC」という電動SUVを提供しており、電動車の製造を拡大しています。ルシッド・モーターズとメルセデス・ベンツは、高級電動車市場で競合しています。
アウディ(Audi): アウディも電動車市場に積極的に進出し、電動SUV「Audi e-tron」などを提供しています。アウディは高級車セグメントでルシッド・モーターズと競合しています。
ポールスター(Polestar): ポールスターは、ボルボの子会社で、電動車市場で高級電動車を提供しています。彼らのモデルはスタイリッシュで高性能であり、競合相手としてルシッド・モーターズに影響を与えています。
これらの競合他社は、高級電動車市場でルシッド・モーターズと競り合い、顧客に異なる選択肢を提供しています。電動車市場は成長しており、これらの競合相手との競争はますます激しさを増しています。
2023年10月時点での株価は約$5.5で、時価総額は12,645百万$です。SPAC上場をしていることから、資金は十分にありますが、今後の販売状況によっては財務状況が悪くなる可能性もあります。
ルシッド及び競合の株価、株式総数及び時価総額

出典:Capital IQより抽出
6.ルシッドの財務状況
下記はルシッドの2019年からの損益計算書(/L)です。ルシッド・エアーの量産を開始しているものの、赤字が続いており、2022年度の最終赤字は1,304百万$になりました。精算キャパシティー15万台/年に対して、年間ベースで25,000台~30,000台程度の生産状況であることから、圧倒的に受注が足りていない状況が伺えます。ただし、上述の通りルシッドはSPACにて上場をしており、資金を十分に有していることから、安定した財務状況ではありますが、2,000百万$レベルの赤字を継続してしまうと2~3年後にはかなり厳しい状況になってしまいます。
Lucid Group, Inc. PL (2019年~2025年予想)/単位:百万$

出典:Capital IQより抽出
Lucidの生産台数及び出荷台数推移

出典:INSIDEEVs
7.ルシッドの信用スコア
下記はCapital IQが算出した企業のスコアです。1(高)-4(低)に分類されており、「全体」「操業」「支払い能力」「流動性」の4項目を評価しております。ルシッドの信用スコアは全体で最高評価の「1」でした。ブランド認知不足による販売の低迷等によりオペレーションは最低評価の「4」でしたが、高い資金力で今後挽回する可能性がある会社と言えます。個人の見解ですが、ルシッドはテスラと同じセダンタイプのEVを製造し、価格帯はテスラの高級機種と同等の値段です。一般的に高級路線はブランド認知が重要ですが、テスラが先行する同業界でどれだけ認知度を上げていくかが重要なカギとなります。
一方でルシッドCEOは低価格路線も検討しており、その価格帯のターゲットを$50,000程度と定めております。テスラは最近大きく値下げを行い、モデル3では約$40,000程度であることから、ルシッドがどのような製品ラインアップで差別化するかが今後のカギとなります。
ルシッド及び競合のクレジットスコア比較

出典:Capital IQより抽出
Hより
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