【株投資】スパック(SPAC)上場とは

最近は出張続きで少しバテております。アメリカに来て出張に対して思う事は「アメリカは広い」と思う事です。西海岸から東海岸まで飛行機で5、6時間かかるんです。同じ国だよね?と思うことが多々ある程時間がかかります。加えてアメリカ国内で時差が存在しており、2,3時間でも時差ボケが起こるという事です。逆に日本に移動して昼夜逆転してしまった方がよっぽど楽なんじゃないかと思うときもあり、中々アメリカ国内の移動も辛いです。

今日はアメリカで一時流行った「SPAC」という上場の方法について、共有をさせて頂きたいと思います。

1.SPACの由来

SPAC(Special Purpose Acquisition Company)という名前の由来は、その性質と目的に関連しています。以下に、名前の要素の説明を示します:

  1. Special Purpose(特定の目的): SPACは特定の目的を持つ会社です。その目的は、他の企業を買収することです。SPACは、資金を調達しており、その資金を使用して将来的に他の企業を買収する特別な目的を持っています。この「特定の目的」という要素が名前に反映されています。

  2. Acquisition(取得): SPACは他の企業を「取得」または「買収」することを主要な目的としています。SPACが上場し、資金を調達した後、その資金を使って他の企業を取得するための過程がスパックの中心です。この「取得」または「買収」という行為が名前に含まれています。

  3. Company(会社): SPAC自体は、持株会社であり、事業を運営するために設立された通常の会社ではありません。その代わり、SPACは他の企業を取得するために設立され、株式市場に上場して資金を調達します。しかし、SPACも法的な存在であるため、「Company(会社)」という言葉が名前に含まれています。

2.SPACの仕組み

SPAC上場の仕組みは、通常の企業が株式市場に上場するプロセスといくつかの点で異なります。以下に、SPACの上場の一般的な仕組みを説明します:

  1. SPACの設立: 最初に、スポンサーまたは設立者(一般的には経験豊富な投資家や事業家)がSPACを設立します。SPACは特別な目的を持つ持株会社で、資金を調達し、他の企業を買収するために設立されます。

  2. 公開募集: SPACの設立後、設立者は一般投資家から資金を調達するために公開募集を行います。これにより、SPACが資本を調達し、株式を発行します。通常、SPACの株式は単位(units)と呼ばれ、1つの単位には1つの株式と株式の一部を購入するための株券(warrant)が含まれることがあります。

  3. 株式市場への上場: 公開募集が成功し、資金が調達されると、SPACは株式市場に上場します。これにより、SPACの株式は一般の投資家に取引可能になります。

  4. 買収候補企業の探索: SPACは上場後、一定の期間内に買収候補企業を探し始めます。この期間は通常2年から2年半とされており、SPACはこの期間内に買収を完了しなければなりません。

  5. 買収契約の締結: SPACは買収候補企業を見つけた場合、買収契約を締結します。この契約には買収価格や条件、取引の構造などが含まれます。

  6. 投資家の承認: 買収契約締結後、SPACの株主は買収を承認するために投票を行います。多くの場合、株主の過半数の承認が必要です。

  7. 買収完了: 株主の承認を得たら、SPACは買収を完了し、買収候補企業はSPACと統合され、新たに買収企業として株式市場に上場します。SPACの株主は、買収企業の株主になります。

SPACの上場プロセスは、比較的迅速に企業を株式市場に持ち込むための方法として注目されており、企業がIPO(新規株式公開)プロセスを回避することができるため、特に注目されています。しかし、リスクも伴います。買収候補企業を見つけられない場合や、買収交渉が不成功に終わる可能性があるため、投資家は慎重に検討する必要があります。

3.SPACのメリット

SPAC上場のメリットは、さまざまな関係者にとって存在します。以下は、主要なメリットのいくつかです:

  1. 迅速な上場: SPACは通常、迅速に株式市場に上場できます。伝統的なIPO(新規株式公開)プロセスに比べて短期間で上場できるため、企業は迅速に資金を調達し、株式を一般投資家に提供することができます。

  2. 資金調達の確保: SPACは設立時に資金を調達し、その資金を保持します。これにより、企業は将来の成長や買収のための資本を確保できます。特に新興企業や成長段階にある企業にとっては、資金調達の確保が重要です。

  3. リスク分散: SPACの投資家は、SPACが買収する具体的な企業や資産に関するリスクを負う前に投資を行います。このため、投資家は事前にSPACの買収戦略や目標を評価し、リスクを分散することができます。

  4. 投資家への透明性: SPAC上場企業は、投資家に対して透明性を提供する必要があります。SPACは一般的に設立時に目標を明確にし、買収候補企業を選定する際に透明性を維持するための規制が存在します。

  5. 戦略的買収: SPACは買収戦略を持っており、買収候補企業を選定する際に戦略的な視点を考慮します。これにより、SPACは成長市場や新興産業における機会を迅速に追求することができます。

  6. 投資家の選択肢拡大: 投資家にとって、SPACは新たな投資機会を提供します。IPOや従来の投資先に限定されることなく、SPACを通じて様々な産業や企業に投資できるため、ポートフォリオの多様化が可能です。

  7. 株式流動性の向上: SPAC上場後、その株式は株式市場で取引可能になります。投資家は必要に応じてSPACの株式を買い取り、売却できるため、流動性が向上します。

4.SPACのリスク

SPAC上場にはいくつかのリスクが存在します。投資家や関与する企業がこれらのリスクを理解し、注意深く検討することが重要です。以下に、SPAC上場の主なリスクをいくつか挙げてみましょう:

  1. 買収対象企業の選定リスク: SPACは設立時点で買収候補を明確にしていないため、買収対象企業を見つける過程にリスクがあります。適切な買収対象企業を見つけることができない場合、SPACは目標を達成できず、資本を返還しなければならないことがあります。

  2. 価格の不透明性: SPACの株式価格は、買収対象企業が発表される前は通常的に一定の水準に保たれます。しかし、買収が発表された後、株式価格が急騰または急落することがあり、投資家にとって不透明性が生じることがあります。

  3. 投資家の信頼性の損失: SPACは通常、設立者やスポンサーの信頼性に依存して資金を調達します。スポンサーの評判や過去の成功がない場合、投資家がSPACに対する信頼を失う可能性があります。

  4. 規制リスク: SPACは特定の規制に従う必要があり、買収対象企業の選定や買収契約の締結において法的な課題が発生する可能性があります。また、株主投票による承認プロセスも法的な規制に従う必要があります。

  5. 流動性リスク: SPACの株式は市場で取引されますが、買収対象企業が発表される前は流動性が低いことがあります。これは投資家が株式を売買する際に価格変動が大きくなり、不安定性が生じる可能性があることを意味します。

  6. 買収後の経営リスク: 買収が完了した後、SPACは買収対象企業と統合されます。買収後の経営にはリスクが伴い、買収が成功しない場合、SPACの株主にとって不利な結果が生じる可能性があります。

  7. 株式価格の変動: SPACの株式価格は市場で変動するため、株式保有者は株価の変動による損益を受け入れる必要があります。市場の変動により、株価が上昇することもあれば、下落することもあります。

これらのリスクを踏まえて、SPACへの投資やSPACを通じた企業上場を検討する際には、適切なデューデリジェンスとリスク評価を行うことが重要です。投資家や企業は、スポンサーの背景や経験、買収戦略、買収候補企業の評価などを注意深く検討し、リスクとリターンをバランスさせる必要があります。

5.SPAC企業

スパック上場を果たしたいくつかの企業の例を以下に示します。これらの企業は、スパックを通じて株式市場に上場し、資金調達や成長の機会を追求しました。最新の情報にアクセスするためには、最新のニュースソースや株式市場の情報を参照することが必要です。

  1. Virgin Galactic Holdings (SPCE): スペースツーリズム企業であるVirgin Galacticは、2019年にスパック「Social Capital Hedosophia」を通じて株式市場に上場しました。

  2. DraftKings (DKNG): スポーツベッティング企業のDraftKingsは、2019年にスパック「Diamond Eagle Acquisition」を通じて株式市場に上場しました。

  3. Nikola Corporation (NKLA): 電動トラックメーカーのNikola Corporationは、2020年にスパック「VectoIQ Acquisition」を通じて株式市場に上場しました。

  4. QuantumScape Corporation (QS): 固体電池技術を開発するQuantumScapeは、2020年にスパック「Kensington Capital Acquisition」を通じて株式市場に上場しました。

  5. Opendoor Technologies (OPEN): 不動産テクノロジーカンパニーのOpendoor Technologiesは、2020年にスパック「Chamath Palihapitiya Social Capital Hedosophia」を通じて株式市場に上場しました。

  6. SpaceX (Planned): Elon Muskの宇宙企業であるSpaceXは、将来的にスパックを通じて株式市場に上場する計画があると報道されていますが、上場時期などの詳細は不明です。

これらは過去にスパックを通じて上場した企業の一部であり、スパック上場はさまざまな業界で注目されています。ただし、各企業の業績や成功は異なるため、投資を検討する際には詳細なデューデリジェンスとリスク評価が重要です。最新の情報は株式市場の公式ウェブサイトや金融ニュースソースから入手できます。

【SPAC上場企業数】

出典:Statista